トランスルーセント 1巻―彼女は半透明 (MFコミックス)

トランスルーセント 1巻―彼女は半透明 (1)
岡本 一広
メディアファクトリー (2005/06)
売り上げランキング: 1,826
おすすめ度の平均: 5
5 久しぶりの掘り出し物

コミックフラッパー連載の第一巻。
第一話を読んだとき、読みきりだったのかなと思ったけどやっぱり。
あらすじは

体が透明になってしまう奇病、透明病を患った少女、白山しずかとしずかを見守る少年、唯見マモル、そしてそれを取り巻く周囲。
学園生活やら恋やらなんだかんだいろいろあるけど、心あたたまるお話。

かなり大雑把ですいません。でも大体こんな感じです。


ハッキリいって絵は上手くないです。(俺の言えたことじゃないですけど)
絵だけだと、あ〜新人さん。って感じですが、そのお話のなかに輝くものと言うか大器の片鱗が見受けられます。
だって正直透明人間のお話っていったら、その特性を利用して泥棒やったり覗きやったりとかっていうのがお決まりパターンですよね。
でもそれを病気という設定にして主人公のみではなく世界で少数ながらも症例が見つかっているというような設定は斬新でした。
第一話、2人の急接近が少し不自然ながらも、セオリー通り傷ついたところを慰めたわけで、そこはなんとか。
それから何といっても青い。この作品はその言葉に集約されているといっても過言じゃないでしょう。
こんなこっぱずかしい台詞いえねーよ!ってな感じの台詞が目白押し。
そういう場合展開は読めますが、でも逆にそういう清々しさは新鮮だし気持ちいいです。
※同路線にアフタヌーンラブロマがありますね。こいつは後日(そういっていつになるんだ俺。)紹介しますね。


この作品が「白山しずか」の連作になりえたのは一話目の最後のコマの存在がすべてですね。あんな小さいくせに基本設定の基盤になったよ。
もしあのコマがなければ「透明病」に関する連作だった可能性もあったかもしれないですね。
ほいで第二話です。目立たない人間と目立ちすぎる人間、お互いを理想とし、お互い普通になりたいと思ってる。すぐにこういう対比を出してくる、上手いですね。
やっぱり公園でのマモルの発言はありがちですが、アレをああいう構図のコマでやるあたり、シビレました。
やっぱりウマいんだよね岡本先生。
三話目もやっぱりマモルがキーパーソン、透明人間の恵子さんに再び希望を持たせる。
あなたが思ってるほど現実って悲観的じゃないよ。っていうメッセージかな。
四話目のマモル自転車⇒電車のシーン。100%不可能、誰が見ても分かる。
だけどアレは漫画的に考えると盛り上げ方としては最高。
実際大河内さんの発言にもあるように伏線はあった。自分はあれが伏線だって気づかなかったよ。わざとしずかに気を使うよりは普段のことをしているほうがいいってことなのかと思った。
この話で透明病のひとつの原因がちょっと分かった。これからも小出しにしてくのかな。
五話目、部長の態度が一話目から180度変わったけど、これはやっぱりマモルと触れ合ったおかげで傍目から見てもしずかが変わったってことなんだろうな。
そんで四話と五話は実は同じだと気づいたり、絵と演劇って舞台は違うけど二つとも「みんながいる、ひとりじゃない」ってことを気づかせた。
これはこの作品のテーマだと思う。透明人間という社会から見て特異な存在だけど、やっぱりそういう人間でもひとりじゃない。まわりにみんないるっていう。
恵子さんのエピソードもマモルがそれをきづかせたわけだし、一話目だってそれをしずかとマモルっていうメタでやった話だし、二話目だって「みんな特別で、私だけじゃない」てことだし。
六話目は父親としずかの軋轢だけど、これもキーパーソンはマモルだった。一見、ガキの喧嘩みたいな言い合いだけど、これは前半部のしずかの「大きな声で自分の主張を叫ぶのってすごく気持ちがいいのよ。」っていう発言を受けてなんだけどソコでこれをもってくるかって感じだぁ。
それで最後はやっぱり共通のテーマ、「ひとりじゃない」ってこと。
苦しむのはひとりでではなくて、一緒にくるしんでやることが責任をもつことだ・・・と。
現代の難病に悩む人もきっと同じような悩みをかかえているんだろう、それをのりきるためには、タカシや大河内さん、演劇部の仲間。そういう理解者、支持者が必要不可欠なんでしょうね。そういうメッセージにも通じてる。
上手いなぁ。キッチリまとめてるもんなぁ。マジで才能はトップクラスだと思います。
そいでキッチリ脇役も立ってるし。大河内さんはすっかりギャグ担当になってるし、親衛隊もいい味。お決まりだけど。
ところどころにちりばめられるおバカギャグも個人的には好き。
では何故★五つではないのかと言うと、やっぱり絵ですかね。
いまのままでももちろん漫画読みには高評価でしょう。
けどこれだけの才能をコアな人間たちだけのものにしておくのはもったいない。
万人が読みやすい、決してキレイとはいいません、今の味のある絵を完成させていってほしいと思います。
ほいで構成もいまのところ王道の王道というか分かりやすい展開が続いてるんですが、これはこれで清々しくて好きなのですが、そのパターンのみで読者を引っ張ってくのはちょっと酷かなぁとも思うのでそのへんの改善の余地もあるかな。
というわけで期待の分☆だけ減らさせてもらいました。
ところでやっぱり岡本一広氏はガンダムとか好きなんでしょうかね。


参考資料:

ラブロマ 1 (1)
ラブロマ 1 (1)
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とよ田 みのる
講談社 (2003/09/22)
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