ヴィンランド・サガ(1) (講談社コミックス)

ヴィンランド・サガ 1 (1)
幸村 誠
講談社 (2005/07/15)
売り上げランキング: 297

ついに待望のヴィンランド・佐賀、もといヴィンランド・サガが発刊。
帯にも書かれていますが、「プラネテス」の幸村誠、最新作です。今後「プラネテス」の。が取れることを願います。
装丁が地味です。地味すぎます。シュールです。この作品を表してますけど、こりゃジャケ買い需要は見込めなそう。
何ならいっそのこと商売上手にA5版と通常版の2版型出せばいいのに。求める客層としては絶対それで成功するよなぁ。商売下手ですな。あとで完全版とか出すのはなるべく勘弁ですけど。
内容はこんな感じ。

11世紀、フランク王国。村同士の小競り合いに参戦する、北方の異民族。
彼らは「ノルマンニ」や「デーン人」、「ルス」、「ロス」と呼ばれた。
後に「ヴァイキング」と呼ばれるものたちである。
ヴァイキングの少年、トルフィン、彼は今帯同してるヴァイキングの長アシェラッドに父親を殺された身であった。そう、彼は復讐のために乗っているのだ。この船に。

ええとずいぶんシナリオを無視した内容ですが、まぁ概要ということで。そいえばヴィンランドの名前を出さなくてよかったのかな、いいよなぁ(^^;


まずはなんといっても圧倒的画力。
画力というか表現力というか、幸村誠氏の絵には見るものを圧倒する魅力があります。
まず彼の漫画には背景が空白のシーンがほとんど見受けられません。
書き込みがスゴイ。一話だけみてもモブ(群集)シーン多用でハッキリいってこのまま週刊連載をつづけられんのか?って雑誌で見たときは感じました。
だってモブも手抜きじゃないから。書き込まれたモブですよ。
少年誌で指チョンパだし。
そいで狂気、狡猾、希望、躁鬱、悲壮。
そういう感情を表してそれをダイレクトに伝える絵。それがもうハッキリいって漫画界のトップレベルです。
なんといっても決闘シーンでのアシェラッドの狡猾さ、狂気の表情、そしてそれに対するトルフィンの憤怒の表情。
アレは今巻最高のシーンだと思います。幸村誠氏の力が1番良く分かるシーン。魅力が凝縮されていました。
それとは対照的な兵たちの歓喜、トルフィン少年時代の希望に満ちた目。コマのところどころに散りばめられる小ネタ(てかコメディチックな発言)そんな幸せな絵も描ける。やっぱり彼は凄腕だよな。
そういう点、表紙のトルフィンはな〜んかぶすっとした青年って感じでかなり損してるよなぁ。1番購買者に訴えなきゃいけないところなのに。
それに回想への持って行き方も自然だなぁ。
肝心の題にも使われている「ヴィンランド」ですが、今巻の後半にレイフ・エリクソンによってその存在が示唆されています。
それが回想に入るまえの「ここではない、どこかへ」とつながってるんですね。
史実によると、彼は西暦1000年にヴィンランドにたどり着いたとされています。(アイスランド・サーガという伝説があるらしくそれに基づくものか、詳しくはwikipedia参照)
レイフ・エリクソン - Wikipedia
劇中ではその2年後の西暦1002年に語っている。そのときは冗談半分に聞いていた少年時代のトルフィン。
ですが、最後に冗談半分だったその存在を大きく考えることになるのです。
他の村で散々こき使われた奴隷がトルフィンたちの村へ逃げてきます。半死の奴隷を偶然見つけたトルフィンの父、トールズは奴隷を助けます。
しかし奴隷の所有主、ハーフダンがやってきて奴隷を連れて行こうとします。
トールズは普通の4倍もの羊を出し、その奴隷をひきとります。
しかし、奴隷は死んでしまいます。きっとトールズは生き延びれないことは感じていたでしょう。でも奴隷が最後まで奴隷であり続け死ぬ、そういう道だけは避けたかったのでしょう。自分の先祖がそうであったように。
そのときトルフィンは矛盾を感じました。
ノルウェーでの自分たちの祖先が迫害されてアイスランドに逃げてきたのに、ここでもまた同じ過ちが繰り返されるのか。そのとき更なる逃げ場所はあるのか?
いったいどこへ行くのか。と。
きっとこの時点でトルフィンはそういう迫害やら奴隷やら丸めて捨ててしまいたいような思いだったんでしょう。
そういうもののないようにと移住してきたという言い伝えを聞いた直後の出来事としてその出来事は鮮烈すぎた。
幼ながらにヴィンランドの存在を感じ、そして欲したのでしょう。
きっとこの後、トールズの死が描かれて、そのときその欲はより強いものとなり、自然とヴィンランドを求めるんだろう。ヴィンランドに希望を求めて。
史実に基づいているのでもしかしたら結末は↓のとおりかもしれませんけど
トルフィンのその後と家系
時代背景

あらすじ書きすぎたかな。最後のほうの読みは明文化はされていないので読み違いだったらスンマソン。
それにしたってこの作品、歴史モノの皮を被った完全なる人間ドラマだよなぁ。
プラネテスでもあったが、近作でも、「人間は皆何かの奴隷」「どこへ逃げればいいの?」、そういう発言が現代人に対するアンチテーゼだよなと思ったり。


あ、そうそう、なんで星四つ半かは長期連載モノ(たぶん)ですし、1巻は過去編に入って話の進みが緩やかだったのも含めて若干評価を落としてあります。
巻数を重ねて物語が何重にも重なっていって核心が見えてくれば絶対評価はあがりますので。
まぁ様子見ってことです。それだけ期待もデカいんで!