野ブタ。をプロデュース

芥川賞候補にのったときくらいに購入したのですがめっちゃ忙しくて読んでませんでした(^^;

桐谷修二、彼は他人の前では着ぐるみを着たかのように良い様にふるまい、心からの付き合いを疎んでいた。
だが、彼はその話術や洞察力を巧みに使い表面だけの付き合いでクラスの人気者に上り詰めた。
そんなクラスに1人の転校生がやってきた、小谷信太、ワカメヘアーのおデブさん、ようするに野ブタだ。
修二はひょんなことから彼を人気者にプロデュースすることになる・・・。

ヤバい、正直震えた。
これがデビュー作ですか、クオリティ高いなぁ。
帯コメントを見てみると(特に斎藤美奈子氏の)全編笑いの作品なんかなぁとか思ってたんですが、甘く見すぎでした。
もうバトルロワイヤルですよ。凶器の無いバトルロワイヤル。
読み出しは鼻につく変な形容が気になりましたけど、これはこれで白岩文体なのかなぁと。(笑)が出てくるトコとか。
それはそれで読み手に託しちゃってる部分があるけど挑戦的だなって。
まあ序盤以降、野ブタがプロデュースされていく中盤あたりまでは楽しく読めるんですよ、会話は多少造られたって言う感じ(というか小説で会話を自然に見せることができるのか)ですがね。
修二の思惑も上手くいくし、何もかもが上手くいってきているっていうところから段々と綻びを見せて。
思えば野ブタに近寄りすぎたり、都会に行ったときの計画が少しずつずれたところからその綻びの伏線はあって、それがアノ場面で一気に具現化したのだろうと思う。
休みに入って、「着ぐるみ」を着る必要も無くなって疎ましく思えたころに最悪に重なった不幸。野ブタに語った懸念、まさに自分のものとして自身に降りかかってくる、それは想定しえたことであって想定したくなかったこと。
だけど、彼は素直になれない、野ブタ、マリ子、優しさを感じても、それが自分の1番求めているものだとしても、やっぱり「桐谷修二の着ぐるみ」のプライドが捨てきれなくて。ココで折れたら自分のもとめる「ぬくさ」はもうないだろうから。
そんな彼にはそれは追い討ちにしかすぎなかったのだ。
現実から逃げ、嘘をつき、そうやって固められた男には「逃避」しか残されていなかった、それは必然だったのだろう。
それは私たち読者も少なからず経験したことがあることへの反面教師としての存在だったのかもしれない。


追記:
調べてみると「野ブタ。」がドラマになるらしい。
主演はKAT-TUN亀梨和也とNEWSの山下智久、正直どうなんでしょうね、200ページ程度の短編のドラマ化。
しかも連続ドラマなのでオリジナルのエピソードが入ってくるのでしょう、見るところによると野ブタこと小谷信太の存在はないものになり、山下が冴えない生徒としてプロデュースされるようです。いや、冴えなくねぇだろ。
この作品の肝は純然たるデブサイクが修二のプロデュースの下で人気者になるという事態が面白いのであってどっかカッコいいと分かっている俳優を起用するのはどうなんですか?
正直ここは一発オーディションで決めるべきではなかったのかな、プロデュースという本編の内容とリンクさせるように正真正銘のデブサイクをオーディションで決める。それで実際に変わっていく様子を新鮮に見せられると思うんだけどなぁ。心に残るにはそうやって流行り廃りに左右されないキャスティングも重要なんじゃないかな。原作の旨みも生かされて。
んでもし原作後半の展開をそのまま展開するなら鬱極まりない展開になっちゃうよ、笑いからの転落が主題を鮮烈にしたと思う私はちと期待できないかなとおもっちゃってます。
まぁ野ブタの存在は女生徒としていかされるようですが、女生徒にした瞬間愛すべきいじめられキャラは適用不可になってしまうし。この作品はどこに笑いを求めるのでしょうか??
ただの青春群像劇というのは鮮烈さが色褪せるので駄目でしょ。