恐竜大紀行 完全版

恐竜大紀行
恐竜大紀行
posted with amazlet at 05.07.29
岸 大武郎
ジャイブ (2005/07)
売り上げランキング: 9,691
おすすめ度の平均: 5
5 とうとう復刊

この作品、私の生まれた数年後の作品だったり。
当時まだ幼くてジャンプというか漫画という歳じゃなかったですね。お母さんに絵本とかw
いや、でも書店でのB5版(でいいんだっけか?)の圧力、んでガキの時代にやったSFCの傑作ゲーム46億年物語の影響もあり、もうこれは買わざるを得んでしょう。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。マジでおもすぃろい。
まず語り口が面白い。
「私たちは白亜紀を初めに調査することにした」とかいう感じの台詞があるんですが実際考えて白亜紀にいけるわけがないんですよ、でもこの軽妙な語り口が何故だか気持ちいい。
考えてみると、この漫画は殊に私たち読者が実際にあたかもその時代にいるような感じにさせるんです。
そういうための演出として奇妙奇天烈な語り口なんではないかなって。
そいで登場人物は恐竜、人間はエピローグくらいしか出てきません。
なのに人間ドラマをやっている、この点は生態学的にとかではなく漫画的にも楽しめて優れているよな。
ただ単に「恐竜」だけでは終わらせないっていう凄さ。鳥山明氏も指摘していましたね、恐竜のみって。
この作品、一話完結であらすじとかかけるもんでもないですが、とにかく一話一話が秀逸ですよ、話の結びが特に。
「希望」って言葉がよく似合う。
凄惨な事が起きたりもするなかでアレだけ毎回毎回お話を希望へと導いていく技量、スゴい。
でも勿論人間に対する警告もあり、繁栄しすぎて有頂天になっている種はかならず後ろに追い抜かれ、トップから落ちる、なんか逆境ナインみたい。
でも確かに窮地は生物を強くするって確かですよね。歴史的にも。
もちろん知ってのとおりの恐竜の絶滅も描かれるのですが、それで終わらせず、やっぱり私たちに「希望」を見せてくれます。
肉食恐竜と草食恐竜は生物の本能に翻弄されながらも最後はお互いのことを理解できたし、エピローグでは恐竜の血はいまも受け継がれ続けていると表しているし、上手いなぁ、ホントに。
それで絵の描写もこれホントに週刊連載してたのってくらいハイクオリティ、難しいはずの恐竜の怒りとか悲哀もかなり高度に表現されています。
もちろん欠点がないわけではなくて学術的、生物学的に言って正しいことばかりかといったらそうではないですし、でも岸大武郎先生も仰っているように学説は日々塗り替えられるけど、その中にある「普遍的なこと」を表しているというテーマからは逸脱していないし、作品としてそんなところを一掃する魅力が溢れています。
人間だって恐竜だってみんな生きている。
それって簡単そうですごく意識のいきにくい部分だと思うなぁ。
普通に過ごしていれば出会わなかったこの作品に出会わせていただいたジャイブさんと岸大武郎先生に感謝いたします。