見上げてごらん 1 (少年サンデーコミックス)

見上げてごらん 1 (1)
見上げてごらん 1 (1)
posted with amazlet at 05.07.16
草場 道輝
小学館 (2005/07/15)
売り上げランキング: 39,810

ファンタジスタ草場道輝の最新作。
テニス物です。著者いわく「ジャ○プでもうあるじゃん」とのことですが副編集長の押しできまったそうです。

スポーツ強豪校、聖稜学園に剣道の特待生として入学した遊沢了だが、ひょんなことからテニス部の入部試験を受けることに。

正直、結末をしょっぱなで見せるこの手法はどうかと思う。
途中打ち切りをくらってもいいようにのつくりなのか分からないが、しょっぱなアレは興醒めかなぁ。
むしろやるんだったら序盤の試合の途中に回想で入部のころとかをやったほうが効果的なんではないかと思うね。
理論的に計算された青年誌での漫画とかにはいい手法なんだろうけどなぁ。
それと同じくだけど、ギャグ的に「それはまた後の話」っていうのが多いね。やりすぎてもどうかと思うけど。あと展開が唐突だよなぁ。
でもやっぱり少年誌の看板作家だけあって盛り上げ方は上手い。
逆境からの勝利、何かが起きそうな雰囲気、それをスピーディに展開するから。
ただ勝利しなければ入部できないと言う、受験戦争よろしく、ふるいに掛けるような弱肉強食を描くのはどうかと思います。あくまで少年誌なんだから少年に「上手くなければやる意味はない、やってはいけない」という意識を植え付けかねないんじゃないかなぁ。もちろんある程度年が行っているひとは問題ないですけど、少年誌というレンジで狙ってるわけだから。
一方テニスの競技的な面で若干疑問のある部分もある。自分はテニス経験者なのですが、平行陣をとった場合相手がリターンに精一杯ならばネット際に出てボレーが定石だと思うのですが、ボレーのシーンが出てこない気が・・・スマッシュならあるけど。
あとこれはねぇよとかあれはねぇよとかいろいろケチ付けたい部分ももちろんあります。たとえば、テニスは上達が遅いスポーツですから(ここまでいえばわかりますよね)
ある程度こなれてくるまでが長いんですよ。半年から一年くらいやって自分の上達がつかめるくらいだろうなぁって。
このまま無理なシチュエーションが続いていくと全くジャン○連載の漫画と同じでギャグかよ!って感じにもなりかねないです。
サッカーではフリーキックだってシュートは華になります。
でももちろんDFだって好守備をしたりインターセプトをしたり評価すべきところはたくさんあります。
でも印象に残るのはどっちでしょう?
おそらく大半の人が前者でしょう。
テニスはサッカーのDFと一緒。小さい良いプレーを積み重ねていってゲームを組み立てます。ボクシングのように強いストレート一発で勝つこともない、サッカーのようにFKがあるわけでもない。
一見守備のように通常何度もあるプレーが勝負を左右します、ストロークであったり、ボレーであったり。その回数が多いせいで1プレー1プレーの印象が薄くなるのはしかたがないことです。
しかしそれは漫画では致命的です。まんがは一試合を一週で見せるわけではなくて場面場面を小出しにしていかなければならないから、そういう地味なプレーの積み重ねでは読者は満足しないんでしょう。
だから漫画として誇張しすぎてしまう部分は致し方ないのかも知れません。
それはテニスと漫画との間の深い矛盾であり、テニス漫画の一大名作が生まれないのはそのためもあるんだろうなぁ。
それにテニスってスポーツは相手のいないところにうてばいい、そう単純なスポーツなのですがそれだけにその方法が多種多様あり、「いかに相手を崩すか」に主眼が置かれています。
もちろんある程度上手いプレイヤー同士だとごり押しのストローク合戦なんていつまでもつづいちゃいます。そういうとき相手のペースを乱すだとか不意を撃つというかそういう創意工夫が大事なスポーツですよね。
頭を使い、体を使い。そして心理的な強さがカギとなるスポーツです。弱気になれば安全策をとりたくなるし思い切ったプレーもできなくなる。トッププロならばそれを数時間持続するのです、世界一過酷なスポーツの1つでしょう。
そういう理論、心理、両側面からテニスを描く新しいテニス漫画が見てみたいなぁという気持ちがあります。地味でもいいから内容で勝負!ってのが。
だから草場氏も流れでこの連載を始めたのかもしれませんが、どうか頑張ってほしいです。問題はサッカー⇒テニスという土壌の違いに適応できるかどうか。熱い漫画は描ける方ですし。